ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…
弥生の家から自分の家に帰り、すぐに冷蔵庫に行くと メモが貼ってある。
今日は買い物してから帰ると、母親からの伝言。
部屋に行くと制服を脱いで着替える。
綾己との写真を隠している私は 部屋のクローゼットにある衣装ケースの中に手を入れて箱を出す。
「 綾己… ただいま… 」
写真を見つめながら言うと、どうしても潤みだす目に 泣かないよう言い聞かせる。
「 私、見つけたよ… 見つけたの 」
綾己… 私はどうしたらいい?
どうしてほしい?
私の問いかけに綾己の写真は何も答えてはくれない。
「 綾己、声が聞きたいよ… 」
玄関が閉まる音が聞こえた私は 綾己の写真を 箱に入れてクローゼットにしまう。
母親が私を呼ぶ声がして 私は深呼吸し 下へと降りていく。
夕飯準備を一緒にして 食べてからは自分の部屋に戻ると携帯が鳴り出し、見てみると 綾己の母親からの電話だった。
「 はい!私、里桜です! 」
『 里桜さん、明日ちょっと会えるかしら?綾己のアパートに来られる?』
綾己のアパートに?
「 はい、行きます。夕方伺います 』
『 良かった… じゃあ、明日待ってます 』
電話を切ると、遅れて緊張し、携帯を持つ手が震える。
綾己のアパート…
あの日より数日前から行っていない綾己の部屋。
綾己と過ごした大切な思いが溢れる部屋に 明日、私は行く。