ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…
綾己の この笑顔を奪ったのはバイクに二人乗りしてた若者だと…
あの時は 目の前で、消えていく綾己の命に祈り叫ぶしかなかった。
今も鮮明に記憶している…
あの日を…
綾己が亡くなり、知りたかった噂を葬式あとに私は耳にした。
事故相手が、私たちの住む地域の人じゃないと…
一人は茶髪で、何度も謝罪をしにきたが 綾己の母親が拒絶したと。
綾己の母親は優しい人で 若くして亡くなった父親の代わりにもなり綾己を育てた人。
私はまだ、紹介されることはなかったが 綾己から話は聞いていた。
一人になった綾己の母親、私はお葬式が終わっても そばについて涙している姿に こらえられず、話しかけた。
「 あの… すみません、私… 初めてお会いします。奥瀬 里桜です。
実は、綾己さんと付き合っていました… 」
「 …奥瀬さん?うちの綾己と… そう、ですか… そう、綾己と…… ごめんなさいね… 綾己は もう…… 」
綾己はいない…
泣きながら言う母親に、私は首を振り、綾己の遺影を見ながら母親に言った。
綾己の笑顔を、もう一度見たい…
「 あの日… 私と待ち合わせていたんです。私と会うために… 綾己さんのお母さん、ごめんなさい… 」
綾己に、会いたいよ…
「 いいえ… 綾己には、あなたがいてくれた… 一人じゃなかった… それだけで、いいの… 」
私という存在が ほんの一瞬でも、嘘でも 綾己の母親の救いとなるなら 私も救われる気がする。
でも、私の綾己の命を奪った人を…
私は 許さない…
私と綾己の幸せを奪った人を…
絶対に、許さない…