きらきら

☆るいーず☆なら堂々とクラス会に行って笑顔をふりまき、みんな彼女に群がり彼女の笑顔を待っているけど私は☆るいーず☆ではない。☆るいーず☆は必要だけど私の必要性はない。

「佐々木ってさー。卒業してから変わったよね」
堀田君は勝手に棚からお菓子を発見してトレイにのせる。

「変わった?」

「うん。なんつーか前よりはっきり物を言うようになって話しやすい。けっこう強気なんだね」

「そんな事ないよ」

「ほら強気」堀田君はまた笑った。

リアルは嫌い。私は人数分のコーヒーを揃えてトレイに置き、堀田君を無視してみんなに配る。堀田君は「お菓子発見しました」と、元気に言いながら皆の輪に入りスッと溶け込む。世の中には二種類の人間がいてそれは例えば私と堀田君であり陽と陰、明と暗、あっち側とこっち側。彼と私の間には大きな割れないガラスが見える。息苦しさが止まらない。酸素が足りない空気が欲しい。肺いっぱいに空気を吸い込んでもどこかに穴が空いてるような気分。私は走って更衣室に飛び込みロッカーの壁に背中をぶつけてズルズルと座り込みポケットからスマホを取り出した。何度も何度も深呼吸を繰り返し☆るいーず☆のツィッターを開く。

グレーのハートを数えながら呼吸を落ち着かせる。『大丈夫だよ。みっちゃん』☆るいーず☆手のひらの中で私に話しかけていた。こないだ撮影した画像の評判がいい。まだこれからがあるから小出しにしてるけど、最上階フロアで会った女性のケリーバッグが入った画像の評判が高かった。

『今年の限定色ですか?』『このバッグいいなー高そう』『☆るいーず☆さんにピッタリですね』『ハイスペックな彼氏とホテルのカフェとケリーバッグうらやましい』『バカみたい』『☆るいーず☆さんに憧れてます』ひとつひとつのコメントを読んでたら息苦しさが治まった。スマホを胸に抱いて底冷えする床に座り込み大きく深呼吸をした。もう大丈夫。もう……大丈夫。



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