クリスマスイブの贈り物


「戻りました」

配送センターに戻って、サンタスタイルのまま明日の朝一配達の荷物を仕分けしているときだ。

「おい寺島。これお前宛だよな」

不在で戻ってきた荷物を仕分けしていた同僚が、小さな荷物を持ってきた。

「あ、そっすね。今もらいます」

差し出されたティッシュケース程の大きさの箱は、今日見た覚えがある。
差出人には、俺の好きな女優の名前が書いてあった。

二度見して、ふと、思い出す。

『理想の彼氏は西島隆俊だなぁ。大人で、余裕あって。素敵』

よく愛奈がそう言ってた。
嫌味かよって思いながら、「あんな親父、すぐ腰が立たなくなるぜ」と言って、「やだーエッチ」なんて嫌がられた。顔は笑っていたけどな。

はやる気持ちを抑えて中を開けると、箱の真ん中に便箋が一枚、途方に暮れたように入っていた。

【私の夢をかなえてよ】

その字は、昼間ホテルへ届けた、あの伝票の字と一緒だ。

『クリスマスイブに、好きな人と、思いっきり豪華なディナーを食べて、夜景の見える部屋に泊まって、夢みたいな一夜を過ごすの』

知ってるよ、お前の夢くらい。
だから俺じゃ無理だって言ったのに。

「何やってんだよ。こんな手のかかること……」

俺じゃ、理想の男と違うんじゃないのかよ。

大体、自分でホテルを予約するとか馬鹿じゃねぇの。
一流企業に勤めてんだろ。俺と別れて、理想通りの男なんて見つけるの、簡単なんじゃないのかよ。


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