注文の多いクリスマスイブ
【ネックレスはこの前、誕生日にプレゼントしたやつで】
【髪型はこの前結婚式行った時のがいい】
【指輪はしてこなくていいよ】
その後も次々届くメッセージを不思議に思ったけれど、全てリクエスト通りにした。何だかんだ言いつつ、恋人が久々に関心を持ってくれたことは嬉しい。
髪は丁寧に巻いて、大人っぽいサイドアップに。結婚式に行った日には何も言ってくれなかったのに、実は密かに気に入ってくれていたのかと、これまた嬉しくなる。
途中だったメイクも仕上げて、姿見で全身をチェックする。
そこには、これからクリスマスデートです!と言わんばかりのキラキラした女の子が立っていた。
どこか気恥ずかしくて、とても直視できない。でも、最高に楽しい気分だ。
ふと、考える。
いつから私はこの楽しさを忘れてしまったのだろうと。
デートのためにお洒落をして、ウキウキした気分で彼を待つ。
智宏とつきあい始めた頃にも、そんな時間が確かにあった筈なのに。
熟年夫婦なんてからかわれるのは、単に時間が経ったせいではない。
居心地のよさにどっぷりハマって、恋をサボっていたのは、他でもない私だったのだ。