7年越しのふたりの約束
「あっすみません……。」
「急に、開けるなって!」

 二人の声が重なる。

 紗羽は自分の耳を疑った。目の前に大きな箱があるため相手の顔が確認できないが、この声は忘れたくても忘れられない愛しい人の声だ。

「メリークリスマス、紗羽!って、なんで泣いてるの!」

 先程、拭いたはずの涙がまた流れた。

 大きな箱を廊下におき、ヒクヒク泣く紗羽は抱き締められる。

「……たける……。」

「うん、ただいま紗羽!」

 ポンポンと背中を叩かれながら紗羽の呼吸が整うのが分かると、"ちゃんと顔、見せて?"と耳元で囁かれ、両頬を尊の手で包まれる。

 ゆっくりと顔をあげる紗羽と、目線を会わせようとしゃがみこんだ尊の視線が、相手を捕らえた。

「帰るつもりだったの?」

「………。」

「約束したじゃん?……俺は、紗羽だけだよ。だからこの2年頑張って来れたんだ。……7年目の今日、最高の日にしたい。……ちゃんと説明するから、とりあえず中に戻ろうか?」

 紗羽は、頷きながら部屋に戻る。

 ちゃんと約束を覚えてた尊を目の前にすると、特別な指輪のことや昔の彼女と言われたことなんてどうでもよくなった。

 本人に言われたわけじゃないんだし。

 紗羽は、ベットに座り、マットレスの確認をしている尊に思いっきり突進し、押し倒した。
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