【完】『傷跡』
そこには。
「AV女優」
と衝撃的な活字がある。
さすがに多聞も一瞬驚きを隠せなかったが、すぐさまいつもの平静な多聞の顔に戻って、
「なるほどねぇ」
とだけ呟いた。
「…多聞は、怒らないの?」
だってアダルトビデオだよ、とリマは言った。
「でも仕事やろ?」
「確かにそうだけど…さ」
「なら過去やし、別にええのとちゃうの?」
「けどさ…こんな私で、いいの?」
リマの目から、涙が頬を伝い落ちて行く。
「あのな、リマ」
多聞は向き直ってリマの涙を拭き、ふんわりと包むように柔らかく抱き締めた。
「何の事情かは分からんし、うちにはよう分からん。せやけど」
多聞はリマの頭を撫でた。
「過去のことやろ? 誰も昔は変えられへん」
多聞は続けた。