【完】『傷跡』
せやけど、と多聞は、
「たとえどんなことがあったったかて、リマはリマやろ? うちがリマがえぇと決めたんや」
多聞の武骨な指がリマの髪を撫でる。
「何も気にすることあれへん。むしろうちは、リマでないと嫌や」
しっかりとした、明らかに真剣だと分かる声である。
多聞の抱き締める腕に力が入った。
「うちのわがままやけど、悪いがこれだけは、うちのわがままを通さしてもらうで」
リマはすでに、声を漏らし多聞の胸に顔を押し当てて泣いていた。
やがて。
リマが顔を上げた。
「…じゃあ、今度は私がわがまま通していい?」
「かまへんで」
リマは多聞の肩に腕を回し、多聞の首筋にみずからの唇でしるしをつけた。
「これで、多聞は私のものだからね」
「…そんなんはじめっから決まっとるやないか」
窓に目をやった。
雨が雪に変わりはじめたようで、うっすらと夜景が白みがかっている。
「ほんまに雪降ったな」
少しおどけ、リマを抱えあげるように多聞がお姫様抱っこをすると、奥のベッドのある方へと消えたのであった。
(完)

