【完】『傷跡』
多聞はリマを見ると、
「さすがリマ、今日は格別べっぴんさんやね」
と言い、
「ディナーも押さえたで」
言っとくけどおごりやで、とリマを笑わせてからロビーのレストランへ入った。
コースはフレンチである。
前菜から静かにディナーは始まった。
多聞の所作は慣れたもので、
「まぁ昔オカンが、なんぼ貧乏でもマナーは身につけやって」
チラシの裏側に前菜やら肉やらフルーツやらを描いたものを前に、ナイフとフォークで使い方を稽古させられた話をした。
裕福ではなかったが、
「グレなかったのは、よく本を読む癖をつけてくれたから」
と多聞は語った。
「せやからダイレクトメールでも、つい暇なら読んでまう」
多聞の話には必ずオチがあった。