もう一度出会えたら
『菜々….』


彼に名前を呼ばれただけなのに涙まで溢れそうになった。


『どうして逃げなかったの?』


「あなたにキスして欲しかったから…私も会いたかったから」


裸にされてしまった心は、もう隠せるものがなにもなかった…。


口から勝手に溢れていく心の声が彼の耳にも私の耳にもはっきりと届いた。


彼の指が私の唇を滑りながら撫でていく。


この甘い空気にこのまま流されてしまいたいけど彼にも本当の意味で愛されたいと思った。


「あなたは?私の事…」


『菜々さんは、僕の気持ち分からない?』


そう聞いた彼に何も答えられなかった。私の肩に顔を乗せハァ…と大きく息を吐いた彼。


そしてそのまま続きを言わない彼に、私も徐々に不安になってくる。


「…ただ怖いの。期待してまた前みたいに1人になるのが怖いから。だから、体だけなら今日限り涼くんとはもう会わない。」


『奈々さんはそれでいいの?』
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