もう一度出会えたら
大翔は届いたばかりのアイスコーヒーを飲むと


『覚悟はできてるつもりだから…気にせず言ってくれていいよ』


喉がカラカラに乾いて声が出ない私にそう言った大翔…


私も自分のグラスにまだ半分ほど残っていたアイスコーヒーを一気に飲んだ。


待っている間にどうやって話そうかと頭の中で整理はしたつもりだったけど


いざ大翔を前にすると、そんなものは意味の無いものになってしまった。


今の心のままに言うしかなくて重い口を開いた…。


「…………実は…私、気になる人がいたの。だけど、人を好きになるのが怖くなってからその人への想いも認めたくなくて、自分の気持ちから逃げてた」


『人を好きになるのが怖いって…元彼との事がきっかけで?』


「…別れた彼にはね、実は奥さんも子供もいたの。」


『え…元彼って不倫だったのか?』


大翔はまさか私が不倫をしてたとは思わなかったのだろう。ストレートに疑問


をぶつけてきた大翔の声にはショックを受け動揺が混じっているようだった。


「結果的にはそうなるよね…正確には彼が既婚者だったなんて知らなかったんだけど。単身赴任だった彼は、家族とは別に暮らしていたし全くそんなそぶりも見せなかった。だけどやっぱり気づかなかった私が一番のバカなんだよね。
何も知らずに愛されてるなんて錯覚して。ある日、なんの前触れもなく真実を知ることになって、身を引いたって話」


『そっか…色々あったのに気づいてあげられなくてごめんな』
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