極上な彼の一途な独占欲
「俺はその程度か」


静かな声が響いた。

私はおそるおそる顔を上げた。

伊吹さんは変わらず、笑みの気配もない目つきでまっすぐ私を見ていた。


「天羽にとって、俺はそんな程度か」


鼓動が速まってくるのを感じた。

ドキン、ドキン。

息が苦しい。


「…どういう意味ですか」

「こっちこそ聞きたい。"どういう意味ですか"って、どういう意味だ?」


苦しい。


「俺は別に、なんでも話せなんて言うつもりはない。ただ聞いたことには答えてほしいし、答えられないならそう言ってくれればいい」


フランネルのシャツの、胸のあたりを掴んだ。心臓が肋骨の奥で暴れている。

伊吹さん、私、言いたいんです。

言いたいんです。


「俺相手にそこまでする気はないなら、それでもいい。そういう返事だと受け止める。だがこれまでのことを、なにもなかったみたいに振る舞われるのは」


彼はそこで言葉を切り、一瞬目を泳がせた。


「…なかったことにされるのは」


視線が辿り着いたのは、彼の足元。


「耐えられない」


どうしてこうなってしまったんだろう。

ついこの間まで、彼の言葉に浮かれて、新しい一面を見るたびはしゃいで、ちょっとした幸せに浸っていたのに。

ヒロと再会せずに済めばよかった?

それも違う気がする。
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