極上な彼の一途な独占欲
にこりと笑む神部に挨拶し、宮野にも別れを告げ、伊吹は編集室を出た。屋外に出たところで美鈴に電話をかける。すぐ繋がった。


『はい』

「起きてたのか」

『神部の電話は申し訳ないけど無視させてもらいました。一緒だったんでしょ?』


ビルの前の駐車場に停めておいた車に乗り込みながら苦笑する。よくやったと褒めてやりたい。あそこで電話に出ていたら、本格的に休日が潰れるところだった。


「すぐ出られるか?」

『はい』

「駅まで出てろよ、そこで拾う」

『行き先も決まってないのに?』

「まずは昼飯といこうぜ」


ちょっと考えているような間が空いてから、『わかりました』と返事が来る。それはそれまでの、少しふてくされたような声とは違い、楽しげに弾んでいた。




美鈴は伊吹の車を見つけるなり駆け寄ってきて、完全に停まる前にドアを開けた。ナビシートに滑り込んできて、せっかちだな、と言おうとした伊吹の唇にキスをする。


「お疲れ様でした」


にこっと笑う彼女からは、バスルームと香水の匂いがふわっと香った。


「無事片付いたんですか?」

「うん。月曜に神部さんから共有されると思うんだが、オフ会の……」

「あ、やめて、いいですいいです」


車を車線に戻しながら見ると、美鈴は耳を両手でふさいで首を振っていた。伊吹は笑った。

美鈴は正直なので、"知らないふり"というのが苦手だ。ここで先に聞いてしまったら、月曜に神部と話すとき、対応に困ると考えたんだろう。


「いつものところでいいか」

「はい」
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