極上な彼の一途な独占欲
休日にランチを食べに行く場所なら揉める必要もない。車を少し走らせたところにある、隠れ家のようなカフェ。たまたま美鈴が見つけ、以来ふたりの行きつけとなった。
だがそれも今回で終わりそうだと、店に入った瞬間伊吹は思った。
「あれーっ、伊吹さん、美鈴」
壁側の席から手を振る男に微笑み返しながら、回れ右して店を出ようとした美鈴の腕を掴んで引き戻した。隠れ家風なだけあって、ここらにほかに店はない。探し直すとなると難儀だ。腹も減っている。
「心配しなくても、もう出てくところだよ」
「なんであんたがこんなところにいるの? 活動圏内じゃないよね?」
「仕事」
結城は愛想よく美鈴に笑いかけ、伝票を持って立ち上がると、レジカウンターのほうへ行った。
店内はコンクリート打ちっ放しの壁と床。鉄製のガーデンテーブルセットがいくつか置いてあるだけという殺風景さだが、不思議と居心地がいい。
日当りのいい席を選んで座り、メニューを開いたところに、ぱさっと細長い冊子が置かれた。伊吹と美鈴が同時に見上げた先では、結城が彼らしい悪びれなさで笑っていた。
「アジアン・フェス、そこの公園でやってるんだ。美鈴、好きでしょ」
彼を寄せ付けないよう警戒していた顔に、「!」という歓喜が表れたのを伊吹は見逃さなかった。健気な美鈴は、すぐそれを消して、じろっと以前の恋人を睨み返す。
「俺、ぶらついていくつか記事書いてきたとこだから、今日は夕方までもう行かない。よかったらふたりで遊んできなよ。じゃあ」
すっかりコンスタントに彼に仕事を頼む仲になっている伊吹は、美鈴への若干の後ろめたさを感じながら、店を出ていく彼に手を挙げて挨拶した。
結城の気配が消えた頃、ようやく美鈴が冊子に手を伸ばす。フード、雑貨、音楽の3つのエリアに分かれたフェスの概要が、いかにも楽しそうに綴られた冊子だった。
「行きたいなら、行こう」
「…でも伊吹さん、パクチーは人間の食べる物じゃないって」
「食わなきゃいいだけの話だろ?」
妙な遠慮を見せる美鈴に笑った。
だがそれも今回で終わりそうだと、店に入った瞬間伊吹は思った。
「あれーっ、伊吹さん、美鈴」
壁側の席から手を振る男に微笑み返しながら、回れ右して店を出ようとした美鈴の腕を掴んで引き戻した。隠れ家風なだけあって、ここらにほかに店はない。探し直すとなると難儀だ。腹も減っている。
「心配しなくても、もう出てくところだよ」
「なんであんたがこんなところにいるの? 活動圏内じゃないよね?」
「仕事」
結城は愛想よく美鈴に笑いかけ、伝票を持って立ち上がると、レジカウンターのほうへ行った。
店内はコンクリート打ちっ放しの壁と床。鉄製のガーデンテーブルセットがいくつか置いてあるだけという殺風景さだが、不思議と居心地がいい。
日当りのいい席を選んで座り、メニューを開いたところに、ぱさっと細長い冊子が置かれた。伊吹と美鈴が同時に見上げた先では、結城が彼らしい悪びれなさで笑っていた。
「アジアン・フェス、そこの公園でやってるんだ。美鈴、好きでしょ」
彼を寄せ付けないよう警戒していた顔に、「!」という歓喜が表れたのを伊吹は見逃さなかった。健気な美鈴は、すぐそれを消して、じろっと以前の恋人を睨み返す。
「俺、ぶらついていくつか記事書いてきたとこだから、今日は夕方までもう行かない。よかったらふたりで遊んできなよ。じゃあ」
すっかりコンスタントに彼に仕事を頼む仲になっている伊吹は、美鈴への若干の後ろめたさを感じながら、店を出ていく彼に手を挙げて挨拶した。
結城の気配が消えた頃、ようやく美鈴が冊子に手を伸ばす。フード、雑貨、音楽の3つのエリアに分かれたフェスの概要が、いかにも楽しそうに綴られた冊子だった。
「行きたいなら、行こう」
「…でも伊吹さん、パクチーは人間の食べる物じゃないって」
「食わなきゃいいだけの話だろ?」
妙な遠慮を見せる美鈴に笑った。