極上な彼の一途な独占欲
悩んでいる美鈴の手を、きゅっと握り返した。


「駐車場に戻るまでの、通り道で見つかる店の分だけ感想を書いてやれよ」


半泣きの顔が見上げてくる。


「そう…ですね、そのくらいなら」

「で、一度帰ったら車を置いてまた出よう。飲みたい」

「あ、この間見つけたバー、行ってみます?」

「うん」


気が楽になったのか、美鈴の表情が、ぱっと晴れた。その額にキスをしてやると、甘えるみたいにお返しに、唇にキスが来る。無邪気な美鈴は人目を気にしない。


「行こうぜ」


手を引いて立ち上がった伊吹に、「はい」と明るい声が続いた。




「解せないんですよ」

「なにが」


戻りがてらドライブを楽しみ、夕方になってから帰り着いた部屋で、このまま出直すと肌寒いので、ニットの下にシャツでも着ようかとクローゼットを探っているときだった。

後ろで伊吹を待っている美鈴が、不可解そうに眉根を寄せて首をひねっている。


「映画がダメで、フェスがOKなのが?」

「まだそんなことで悩んでるのか。暇でいいな」

「休日に暇で悪いですか!」


わかったわかった、と適当に流して、一度ニットを脱ぎ、シャツを羽織る。視線を感じたが、無視した。

美鈴はわかっていない。

別に映画がダメなわけでも、アジアン・フェスがOKだったわけでもない。


「俺は単に、やりたいことをしたかっただけだ」

「…どういう意味です?」
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