極上な彼の一途な独占欲
「あっ、私だ!」


美鈴がベッドの脇に置いてあったバッグに駆け寄る。近づいて覗いてみると、神部からの着信だった。


「すみません、昼間無視しちゃってるんで…」


通話ボタンを押しながら、顔の前で拝むように手を立ててみせる彼女に、うなずきを返した。仕事の話もあるだろうし、仕方ない。

とはいえ気になる。というか嫌な予感がする。


「はい、あ、うん、ごめんごめん…え?」


美鈴がきょとんとし、焦ったように「えっと」と言い出したので、やはりと思った。携帯に耳を近づけてみる。


『おごってあげるよ、出てこられない? あんたの好きそうなお酒、いっぱいあるお店だよー、朝まで飲んだくれて踊ろうよ』


仕事で会ったときと声が違う。どこがどう違うのかと問われても説明に困るが、違うのだ。これは美鈴を相手にするときの声だ。

じろっと見やると、美鈴がますます焦った。


「あの、神部、私、今ね…ううん、違うんだけど」


しどろもどろの手から、携帯を取り上げる。


『夜遅くなってもいいよ、あたしはラストまでいる予定だから』

「約束が違いますよ、神部さん」


向こうが黙った。やがていつもの声になって戻ってくる。


『あら伊吹さん、私、なにかお約束をさせていただいてました?』

「俺のいないところで誘われたら困ると言いましたよね」

『事務所の人間も来るんです。あの子の顔を広げるいい機会かと思いまして』


舌打ちしたくなった。神部の勝ち誇った笑みが見えるようだ。こう言われたら、伊吹は口を挟めない。

不安そうにこちらをうかがう美鈴を見た。どうしてはっきり断らないのかと思っていたのだが、わかった。行きたいのだ。

伊吹はため息をついた。
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