極上な彼の一途な独占欲
「わかりました、行かせます。遅くなるかもしれませんが」

『何時になっても待ってると伝えてください。なんなら伊吹さんがご同伴でいらしても結構ですわよ。それじゃ』


あっさりと通話は切れた。

通話時間を示す画面を苦々しく見つめ、唇を噛む。盛り上がりかけていたところにこの水の差され方は、なかなか頭に来る。誰が同伴なんかするか。

美鈴がおろおろと伊吹を見上げている。


「あの…尊さん」

「行きたいなら行ったらいい。別に止めない」

「いえ、その、帰りがけに顔だけ出してこようかなと。私、飲んじゃうとほら、あれなので」


携帯を受け取りながら、バツが悪そうにもじもじしている。こういう言い方をするということは、美鈴も仕事のつもりで行くのだろう。伊吹が腹を立てるところじゃない。

だが面白くはない。


「そうか」

「だから、あの…」

「なに?」

「あの、それまでの間、ええっと」

「俺に繋ぎをしろって?」


そんなんじゃないです、と怒り出すかと思った美鈴は、しゅんとしてしまった。やりすぎたかなと伊吹が手を取るより先に、バッグを持って背を向ける。


「美鈴」

「ごめんなさい、バーに行こうって言ってたのに、神部の集まりのほうにも行きたいなんて思って」

「だから、それは」

「はっきり断れなくてごめんなさい」

「美鈴…」


気にしなくていい、そんなこと。やりたいことをやれと言ったのはこっちだ。ただ相手が神部だったから、警戒心が働いただけで。

力なくうつむいた、その肩に手をかけようとした瞬間、くるっと美鈴が振り向いた。伊吹と目が合うと、してやったりという顔になって、にやっと笑う。
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