不器用な彼氏
『…それ、私のせい?』
『そうだ』
『そんな…』
『だから責任は、取ってもらうぞ?』
『え?』

海成は、月明かりの下でにやりと笑い、髪の一束を軽く掴む。

『簡単なことだ…さっさと、俺に抱かれろ』
『…なっ』

ストレートな物言いに、羞恥のあまり、一歩後ずさる。
瞬間、触れていた髪の束を手放すことになった海成は、若干不機嫌な顔になる。

『そ、そんなこと口にすることじゃないでしょう?』
『何だ、言い方が悪かったか?…じゃ、俺にお前を抱かせてくれ』
『それ一緒でしょ!』

思わず耳を抑えて後ろを振り向くと、今度はそれを狙っていたように、後ろから抱きしめられる。

『ちょっ…』
『菜緒』

耳元で名前を呼ばれ、魔法にかかったように動けなくなる。

『お前、俺の気持ちが、知りたいんだろう?』
『!』
『だったら、俺の想いのすべて注いで、お前を抱く。だから少しの間、俺に身を委ねろ』

背中に触れている海成の胸元から、自分以上に早音を打つ振動が伝わり、海成もまた緊張しているんだと分かると、もう素直になるしかない。

自分の鎖骨の辺りある、逞しい腕にそっと触れ、無言でゆっくり頷く。
後ろからは、絶え間なく押し寄せる波の音。

もう、少しの迷いも無い。
この腕の中で、すべてを委ねて、海成を感じたいと、切に願った。


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