不器用な彼氏
『…偶々だ』
『…え?』
『別に、深い意味なんか無え。偶然、理香子の後、付き合った女が、年下の女だけだっただけで、特別な意味なんか、何もない』
『…そう…なの?』
『いくら自分の女でも、年下に呼び捨てされるとか、堪ったもんじゃねえ』

確かに、海成の性格から考えたら、それも充分頷けた。
逆に捉えれば、自分が呼び捨てを許されたのも、特別な意味などなく、ただ単に、同じ歳だったというだけの話だった。

『私、どっちにしても、勘違いしてたってこと?』
『それは…まあ、そうなるな』

海成にしては、若干歯切れの悪い返答だったけれど、彼にしてみたら、呼び捨てを許す許さないなど、大したことじゃないのかもしれない。

そして、私は、そんなことに一喜一憂していた自分のバカさ加減に呆れて、大きくため息を吐く

『…それより、お前の発言だって無神経なとこあるからな』
『?』

唐突に切り出された投げかけに、今度は、私が海成を振り返ると、憮然とした表情の海成が、正面を見たまま、不機嫌な声音で、言い放つ。

『この旅行中もそうだが、お前、時々前の男を匂わせるだろ』
『匂わせてる?』
『ああ、無自覚だろうがな』

尚も不愛想な顔で、続ける。

『この際だから、ハッキリ言っておくが、お前の昔の男など、想像もしたく無え。だから、発言には充分気を付けろ』

あまりに予想外だった海成のヤキモチ?に、思わず返事もせずに、キョトンとしてしまうと、『なんだ?』と、怪訝な顔で睨まれる。

『…ごめん、だって、海成が普通の男みたいなこと言うから』
『普通で、何が悪い?』

そんなこと全然気にしてる素振りなどなかったのに、なんか可愛い…と思ってしまった。
不貞腐れたようにソッポを向いてる海成に、『これからは、気を付けるね』と約束をするも、口元が緩んでしまう。
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