不器用な彼氏
リビングから寝室を望むと、白く柔らかそうな布団の上が、窓からの月明かりで、水面のよう蒼く揺らめく。

海成が、先に階下に降り、ベットの掛布団を開き、その下に広がる真っ白なシーツの端に腰掛けると、左手を上げ、無言で私を呼ぶ。

まるで“来い”と言っているかのように…。

私は誘われるまま、階段を下り、心臓が零れ落ちないようにと、胸元に手を当てたまま、ゆっくり海成の元に進み、差し出された手のひらに自分の手を乗せると、そのまま誘導され、膝と膝の間の空間に、そっと立たされる。

身長差の大きい私達。

しかも、ベットの脇に立って、初めて知ったのだけれど、このベット自体が、かなり高い位置にあり、前に立つと、ちょうど海成と同じくらいの目線になる。

あまりの緊張に、思わず指先が震えてしまう。

『…菜緒?』
『…何だろう?…緊張しすぎ…かも?』
『嫌なわけじゃないんだな?』
『…うん、嫌じゃない…』
『なら、止めねぇぞ、いいな?』

真剣な顔で、見つめられ、強張った表情で黙って頷くと、フッと笑いながら『それに…』と続けて、

『安心しろ、お互い様だ』

そう言うと、私の手を握ってる左手を自分の左胸に誘導する。
震える手で触れたそこは、トクトクと波打つ心臓の鼓動。
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