不器用な彼氏
何度目かのキスの後、下唇を軽く舐められ、少し開けろの合図だとわかると、小さく隙間を開けて招き入れた。
途端、頬を包んでいた右手は、頭の後ろに回されて、ぐっと引き寄せられ、口づけは尚のこと深くなる。

乱れてくる呼吸。
時々許される、短い呼吸タイムでは、到底追いつけない。

濃厚且つ柔らかなキスの最中、ウエストにあった浴衣の帯ひもが解かれ、締め付けが解放されると、今度は、その浴衣の隙間から海成の左手がそっと侵入し、背中に回る。

『…や、待っ…』

恥ずかしさで、海成の肩を強く押すも、びくともせず、直後、着けていた下着の金具が解かれ、身体は自由に解放される。

咄嗟に、浴衣の前を両手で掛け合わせた。
その姿を黙って見ていた海成は、今度は自分の帯を解き、私の目の前で、上半身の浴衣を脱ぐ。

“ドキッ”

月明かりに照らされ、蒼い水槽の中にいるような錯覚に陥りながら、海成の引き締まった身体が、すぐ目の前に現れ、恥ずかしさよりも、触れてみたいと思ってしまう。

『お前を、直に、抱きしめたいんだが?』
『…!』

…海成は、ずるい

そんな熱い眼差しで見つめられたら、拒否なんかできないってわかってるくせに…。
選択権をまた私に委ねながら、その答えは一つしかないなんて。

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