不器用な彼氏
2階の通路を、3階に上がる階段のある小ホールに出るため、お客様入り口方向に向かって進む。
通路の左側は、接客の為に低めのカウンターが並び、今も業者や一般のお客様が数人座り、担当TMが丁寧に対応していた。

ふと何気なく通路の右側をみると、背丈より少し低い棚が続き、その向こう側には、総務課が広がっている。事務職の若い女子社員達が、仕事中にもかかわらず、眩しい程の女子トークが炸裂していた。

『あ、そのネイル可愛い』
『もうすぐ夏だからねぇ、ペディキュアにも気合入れるよ♪』

ショールームでの接客も任されている彼女たちは、私達が着ている作業用の制服とは違った、上下セパレートタイプのスタイリッシュな制服が支給されていて、ますます女性らしさが際立つ。

20代の若い女性も多く、営業やTMなど、男性陣の多い1~2階を華やかにしてくれている上に、接客時には営業のサポートもできるよう基本的な知識もしっかり入っていて、優秀な人材ばかりなのだから、かなわない。

同じ接客業務なのに、技術職の女性と違って、なにやらキラキラしていて眩しいのは、気のせいだろうか?

“別にひがんでないし”

と、つい卑屈になりそうな気持ちを振り払い、お客様用の入り口のドアを出ると、小ホールの踊り場から3階へと続く階段を、上がっていく。
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