不器用な彼氏
3階の執務室に入ると、いくつかのパーテーションに区切られた、打ち合わせスペースをがあり、その右側の通路を奥に進むと、高めのパーテーションに囲まれた、“広域”の聖域が現れる。
左側のパーテーションに軽くノックしてから、『失礼します』と、声をかけてみる。
“あれ?カイ君いない?”
彼の机の上には、パソコンが開いたまま、本人は不在。もぬけの殻だった。
“残念。煙草でも吸いにいったのかな?”
仕方なくファックスだけ置いていこうと、彼の机に近づくと、隣に座っている同じ、ベテラン広域担当の本庄さんが『進藤?』と声を掛けてくれる。
『あ、いえ。広域さん宛てのファックスが来てたんで』
『ああ、ありがとう。進藤の机に置いといてくれればいいよ』
『はぁ』
返事はしたものの、無意識に、残念そうな声が出てしまったようで
『なんだ?進藤に会いたかったのか?』
本庄さんに、にやりと、突っこみを入れられる。
『いやいや違いますよ!がっかりなんてしてませんよ!』
思いのほか強く否定してしまって、逆に怪しまれたかと焦ったけれど、本庄さんは気にする風でもなく『冗談だよ』と笑い、『しかしなんだかなぁ…あいつ、最近モテモテだなぁ』と、私としては聞き逃せないセリフを口にする。
『モテモテ?』
『そうなんだよ。ほら、今もあそこで』
本庄さんが親指をたてて指差す先をみると、フロアの奥にあるデザイン課の一角に、彼と、彼の隣に寄り添うように立つ、若い女性の姿が見えた。
『あの子…』
『えっと総務課のなんて言ったかなぁ~最近よく3階に来ては進藤んとこきて、ああして話してるんだよな』
確かに、2階のフロアで見たことがある。
ここからは二人が話している内容は聞こえないけれど、よく見ると彼女の右手が彼の制服のシャツの裾をつかんでいるのが見えた。
左手は長くやわらかそうな髪を抑えるように耳にかけ、右側にいる彼を見上げるように微笑んでる。こちらに背を向けている彼の表情はわからないけれど、耳が少し赤くなっているような気がした。
左側のパーテーションに軽くノックしてから、『失礼します』と、声をかけてみる。
“あれ?カイ君いない?”
彼の机の上には、パソコンが開いたまま、本人は不在。もぬけの殻だった。
“残念。煙草でも吸いにいったのかな?”
仕方なくファックスだけ置いていこうと、彼の机に近づくと、隣に座っている同じ、ベテラン広域担当の本庄さんが『進藤?』と声を掛けてくれる。
『あ、いえ。広域さん宛てのファックスが来てたんで』
『ああ、ありがとう。進藤の机に置いといてくれればいいよ』
『はぁ』
返事はしたものの、無意識に、残念そうな声が出てしまったようで
『なんだ?進藤に会いたかったのか?』
本庄さんに、にやりと、突っこみを入れられる。
『いやいや違いますよ!がっかりなんてしてませんよ!』
思いのほか強く否定してしまって、逆に怪しまれたかと焦ったけれど、本庄さんは気にする風でもなく『冗談だよ』と笑い、『しかしなんだかなぁ…あいつ、最近モテモテだなぁ』と、私としては聞き逃せないセリフを口にする。
『モテモテ?』
『そうなんだよ。ほら、今もあそこで』
本庄さんが親指をたてて指差す先をみると、フロアの奥にあるデザイン課の一角に、彼と、彼の隣に寄り添うように立つ、若い女性の姿が見えた。
『あの子…』
『えっと総務課のなんて言ったかなぁ~最近よく3階に来ては進藤んとこきて、ああして話してるんだよな』
確かに、2階のフロアで見たことがある。
ここからは二人が話している内容は聞こえないけれど、よく見ると彼女の右手が彼の制服のシャツの裾をつかんでいるのが見えた。
左手は長くやわらかそうな髪を抑えるように耳にかけ、右側にいる彼を見上げるように微笑んでる。こちらに背を向けている彼の表情はわからないけれど、耳が少し赤くなっているような気がした。