浅葱色の妖



食堂に着くと、女の人がひとり洗い物をしていた。



私には気付いていない様子だ。



「こんにちは~…」



おそるおそる話しかけると彼女はぐるりと首をこちらに向けた。



「あら~あなたが葵ちゃん?はじめまして!」



四十後半から五十前半といったところだろうか。



年を感じさせないような元気な女性だ。



手をふきながらこちらへ向かってくる。



そして私の顔をまじまじと見た。



「たしかにかわいい顔やわ~。これは土方さんも雇うか迷ったやろなあ。私みたいな年増女は迷いもせずに雇ってくれるんやけどな。あっはっは!」



彼女はひとりでしゃべってひとりで笑った。



「私のことはお春って呼んでな。みんなからそう呼ばれとる。それにしても若い子っていうのはええなあ」



お春さんはひたすらしゃべる。



私のことなんておかまいなしにしゃべりまくる。



「そうそう、土方さん、あんたを雇ってもらえるところ探し回ってたみたいやで?」



彼女の話は七割は聞き流した方がいいだろうと思ったところにその言葉が耳に入った。



「どういうことですか?」



「あんたを使えるところを探し回って、頼み込みまくってたんや。結構頑張ってはったで」



近藤さんに頼まれたからとか言ってたけど、それにしてもそんなに頑張ってくれてたんだ。



「へえ~…」



なんだか不思議な気持ちだ。
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