副社長は甘くて強引

 私からドライヤーを受け取った副社長はプラグをコンセントに差し込むと、さっきと同じようにベッドに腰を下ろす。

「こっちにおいで」

「……はい」

 副社長の両足の間にちょこんと正座をすると、彼が小さく笑った。

「そんなに緊張しなくていい。足を崩したらどうだ?」

「はい」

 こんな至近距離で、しかもこれから髪の毛に触れられるとわかっているのに、緊張しないほうがおかしい。

 ドキドキと鼓動が脈打つ中、正座していた足を崩すと両ひざを抱えた。

 副社長がドライヤーのスイッチを入れる。温かい風が吹きつけ、彼の指先が私の髪の毛をすくい上げる。

 緊張したのは初めのうちだけ。彼の優しい手つきが心地いい。

「今度またノリの店に連れていってあげよう」

 彼は私の耳もとに顔を寄せると、ドライヤーの音に負けないように声をあげる。その近すぎる距離を恥ずかしく思いつつも、ずっと疑問に思っていたことを尋ねた。

「ノリさんとはどういう関係なんですか?」

「スポーツジム仲間だ。ノリは脱いだらすごいんだぞ」

「そうなんですか?」

「ああ」

 見た目はゴツイのに、オネエ言葉で話すノリさんのギャップがおもしろい。しばらくの間、クスクスと笑っているとドライヤーが止まった。

「よし、乾いた」

 再び正座をすると、彼に頭を下げる。

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