副社長は甘くて強引

「ここを訪ねたのは、キミが体調を崩して休んでいると佐川から聞いたからだ」

「えっ? 佐川から?」

 佐川の名前を聞いた私の心臓が、嫌な音を立てて跳ね上がる。

「ああ。今日、副社長室に佐川が乗り込んで来た」

「……っ!」

 なぜ?

 佐川が取った大胆な行動の意味が理解できない。

「ルビーのネックレスのことも昨日のキスのことも、すべては自分が無理やりしたことだ、と佐川に説明された」

 副社長室に乗り込んで自分に非があることを認めたのは、私と佐川がつき合っていると勘違いしている副社長の誤解を解くため?

「……そうですか」

 佐川の誠意はきちんと受け止めた。けれど無理やりキスされた恐怖はまだ消えないし、佐川への不信感は簡単には拭えそうにない。

 それでも今までと同じようにまた笑い合える日がくると信じられるのは、きっと同期だから。

 心が少し軽くなる。

「年末、キミの話をきちんと聞かなくてすまなかった。あのとき誤解を解いていたら、佐川から無理やりキスされることはなかっただろうな。悪かった」

 私に頭を下げる彼の動きを慌てて止める。

「副社長は悪くないです!」

「いや、あのときの俺は佐川への嫉妬でどうかしていた。本当にすまない」

「嫉妬? 副社長が?」

 副社長は容姿に優れ、社会的地位も高い。その彼が入社三年目の佐川に嫉妬するなんて驚きだ。

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