副社長は甘くて強引
信じられない思いで副社長の顔を見つめる。彼の耳がほんのりと赤く染まっているのは、私の見間違いじゃない。
「コラ、そんなかわいい顔でじっと見るんじゃない」
「あっ」
触れ合っていた手に力がこもると、体を引き寄せられる。あっという間に副社長の胸の中に収まった私の背中に、彼の腕が回る。
身動きが取れないほど強く抱きしめるのは、照れ隠し?
彼の意外な一面を垣間見ることができて、うれしい。
「ついでだから白状するが、社員教育なんていうのはキミを連れ出すための口実だ」
「えっ、そうなんですか!」
背中を逸らして彼を見上げると、二重の瞳が優しく弧を描く。
「まあな。キミは俺にとって特別な存在だから……」
彼の胸に頬を寄せると、幸せを噛みしめる。
「体が目的じゃなかったんだ……」
「ん? なにか言ったか?」
小さな声で本音を漏らす私の顔を、彼が覗き込んでくる。その近い距離がうれしくて恥ずかしい。
「いいえ、なにも」
「そうか?」
「はい」
短い言葉を交わしつつお互いの瞳を見つめ合うこと数秒、彼の瞳がハッと大きくなる。
「あ、そうだ」
彼は私を囲い込んでいた腕を解き放つと、ジャケットのポケットから透明な四角いケースを取り出す。
「これは販売成績最下位から脱出したご褒美だ。本当は帰国した日にプレゼントするつもりだったが、渡しそびれてしまったからな」