副社長は甘くて強引
余裕を見せつける彼を軽く睨みつける。
「……変なこと言ってないで、早く出てください!」
「はい、はい」
彼はベッドから降りると、床に落としたジャケットを拾う。そして内ポケットからスマートフォンを取り出すと、通話ボタンを押す。
「もしもし、俺だ」
スマートフォンを耳にあてた彼は私に背中を向ける。その隙に体を起すと、乱れた服と髪の毛を整えた。
彼の口から出るのは「ああ」「そうか」などという短い言葉だけ。でもその冷静な対応を見れば仕事絡みの会話だとすぐにわかる。
仕事を中断して、私のもとに駆けつけてくれたのかもしれない……。
申し訳ない気持ちが胸に広がった。
「わかった。今から戻る」
彼は最後にそう言うと、通話を切った。
「会社に戻るんですか?」
ベッドから立ち上がると、ジャケットの袖に腕を通す彼に尋ねる。
「ああ、すまない。この埋め合わせは必ずする」
「いいえ。気にしないでください」
ハートジュエリーの副社長である彼の負担にはなりたくない。ただそう思っただけなのに、彼の眉間にシワが寄る。
「気にするな? 俺は今日もおあずけをくらって内心穏やかじゃない。京香はどうなのかな?」
彼によって覚醒された体は、まだほんのりと熱を帯びている。残念じゃないといったら嘘になる。
「……直哉さんともっと一緒にいたかったです」
恥ずかしい気持ちを堪えながら本音を口にする。