副社長は甘くて強引

 もう、ゴチャゴチャと考えるのはよそう。ひとりで悶々としても仕方ない。

 そう思いながら、会社に戻るために玄関に向かう彼の後に続く。

「外は寒いからここでいい」

「はい」

 玄関先でコートを差し出す。

「こうして見送られると新婚みたいだな」

「新婚って……」

 まだお互いの気持ちをたしかめ合ったばかり。それなのに将来のことをほのめかされ、トクンと胸が音を立てる。

「あ、そうだ」

「……?」

 玄関で革靴を履いた彼が不意に私の顔を覗き込む。

「京香、愛してる」

「……っ!」

 瞳をまっすぐに見つめて紡がれた初めての言葉は突然すぎて、ただ驚くばかり。彼は唖然とする私を見てクスッと笑う。

「そんなに驚くことないのに」

「だって……」

 彼は戸惑う私の両頬を手で押さえつける。そして身動きがとれない私の唇を強引に塞ぐ。

 私が愛する彼は、いつも強引だから困る。

 私からペリドットの指輪を強引に奪い、社員教育と言って強引に私を連れ出した。佐川との関係を勘違いして東京プリマホテルのスイートルームから私を強引に追い払い、そして今日だって私のウチに強引に上がり込んだ。

 でも強引な副社長の社員教育を受けた日から私の人生は大きく変わった。販売スタッフとしてハートジュエリーの副社長である彼の期待に応えたいし、人としてもっと成長したいとも思っている。

 キスが終わったら、私も愛していると伝えよう……。

 強引な中にも愛を感じる彼のくちづけを受けながら、心の中でそう誓った。


                                      【完】
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