副社長は甘くて強引

 ~現在~

 私がハートジュエリーに入社したのは、五年前の誕生日パーティーの記念品と一緒に配られたパンフレットがきっかけ。

 高級感漂う店舗、色とりどりの美しい宝石、スタッフのまぶしい笑顔。こんなきらびやかな世界で私も働いてみたい。

 そう思い、入社試験を受けた。

 ハートジュエリーに無事入社した私が副社長である彼の姿を見かけたのは、入社式と創業五十周年を祝う式典など、ほんの数回だけ。会話どころか挨拶もまともに交わしたことがないし、ショップにいても、社員食堂で昼食を取っていても、彼と会ったことは今まで一度もない。

 それなのに、エレベーターから出てきた副社長と肩がぶつかり、転びそうになったところを支えられるなんて……。

 思いがけない再会に胸が高鳴る。でも五年前の誕生日パーティーで、少しだけ話をした私のことなど覚えているはずがない。そう思っていたのに、彼は一度しか会ったことのない私のことを覚えていた。

「……この指輪は陽斗からのプレゼントです。でも陽斗とは一ヶ月前に別れました」

 彼の記憶力のよさに驚きつつ、ペリドットの指輪と陽斗との関係を打ち明けた。

< 24 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop