御曹司と愛されふたり暮らし
辺りに誰もいないのを確認して、私はハルくんに電話をかける。

おそらくもう仕事が終わっているらしい彼は、すぐに電話に出てくれた。


「もしもしハルくん。花菜です」

【おう。どうした?】

電話の向こうから聞こえる、彼のいつものやさしい声。

やさしくて大好きな彼との約束、本当に楽しみにしてた……けど、仕事なのだから仕方ない。


「あのね、五時から仕事入っちゃって。レストラン、行けなくなっちゃったの」

【あ、そうなんだ? 仕事なら仕方ないよな】

「本当にごめんね。帰るのはそんなに遅い時間にはならないと思うんだけど……」

【じゃあ、レストランはムリだけど、夕飯は家で食べるってことだよな? それなら、こういう日くらい、俺がなにか用意しとくよ】

えっ、ハルくんが? 確かにハルくんの料理はプロ級だけど、連日出張や会議続きですごく疲れてるはずなのに……。

でも、せっかく厚意でこう言ってくれているから、お言葉に甘えてしまおうかなって思って。


「じゃあ、お願いしていいですか?」

【了解。その代わりというわけではないですが】

「ん、なに?」

彼はクスッと笑って、ひと息置いてから。


【チョコはしっかりもらうからな?】

その言葉が、すごく恥ずかしくて、でも、それ以上にうれしくて。


「うんっ! 家に帰ったら渡すね!」

私はそう言って、電話を切った。


レストランの約束がまたしてもなくなってしまったのは残念だけど、ハルくんも全然怒ってなかったし、それどころかチョコ楽しみにしてるって言ってくれた。

よーし、五時過ぎの営業、気合入れて早く終わらすぞー!


……と。
この時は思っていたのだけれど……。
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