御曹司と愛されふたり暮らし
「どういうことですか!?」
時刻は十七時半。橋上さんに言われた、取引先との待ち合わせの時間に、私は、私にしては大きな声を上げていた。
先ほど、十七時になり、取引先に向かおうとした私と瑞香ちゃんに橋上さんは、
『営業っていうより、簡単にごあいさつに伺う感じだから。制服じゃなくて私服でいいわよ』
と言った。
まあ、その方が直帰できるし、いい意味で気楽に臨めそうだったから、私も瑞香ちゃんも言われた通りに私服に着替え、三人で会社を出た。もちろん、橋上さんも私服だ。
会社を出る前、更衣室で、橋上さんがやたらメイク直しを気合い入れてがんばってるなぁなんて思ったけど、営業をかけに行くんだしそういうものか、と思い、私も同じようにしてきた。
それなのに。
どういうこと。
着いた場所は、取引先の本社でも支店でもなく、居酒屋で。
ポカンとする私と瑞香ちゃんに、橋上さんは、ここへきてようやく”白状”した。
「ごめんね~。取引先への営業っていうの、あれ全部ウソでした! 実際は、今日これから、ここで合コンをしま~す!」
……え!?
「どういうことですか!?」
と、ここで話が戻るわけなのだけれど。
私の詰め寄りにはなんの動揺も表さず、橋上さんはシラッとした顔で言い放つ。
「だから、合コン。バレンタインになんの縁もない私のようなかわいそうなアラサーは、常に積極的に動かないとね!」