御曹司と愛されふたり暮らし
三週間後。

三月に入り、肌寒さもいくらか楽になってきた。


ハルくんの様子はすっかりいつも通りになっていて、私もあの話には結局踏みこめていない。

彼のことを知りたい。彼の力になりたい。

だけど、彼は私に踏みこまれることをきっと望んでいない。彼に踏みこむことは、彼のことを考えているようで、本当は私の自己満足なのかもしれない。そう思うと、なにもできずにいた。


そんなある日のこと。
会社からマンションへ帰ってくると、ロビーのソファに誰かが座っていた。

それは……。


「ゆ、唯くん?」

名前を呼ぶと、彼は私に振り返って、パッと明るい笑顔を見せる。


「花菜ちゃん! 良かったー、もうすぐ帰ってくる頃だと思って!」

「もうすぐって……いつから待ってたの?」

「ん? ほんの十分くらいだよ。あと少し待って帰ってこなかったら諦めようと思ってたけどね」

そう言うと、唯くんはソファから立ち上がって、私と距離をつめた。


「花菜ちゃん、仕事帰り? お疲れ様」

「う、うん。ありがと」

なんだか妙に距離が近くて……私は思わず後ずさってしまった。
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