御曹司と愛されふたり暮らし
「奪われた……?」

「俺たちの両親は、俺達兄弟を平等に愛して育ててくれたよ。でも、長男で将来会社を継ぐべき俺にはとくにいろいろ教育してくれていたのも事実で。唯はそれを、親の差別だと思ってる」

「そんな……」

「会社を継ぎたいと思ったのは俺の意志だし、唯は昔からモデルとか芸能界に関心があったろ。だから両親も、唯には自分の好きなことをさせようって思ってただけなんだ。なのにコイツは、いつしかそれを誤解して、俺を嫌うようになった」


唯くんはなにも答えない。きっと、ハルくんの言っていることがすべて本当だからなのだろう。



「……それでもいいと思ったんだ。俺が逆の立場だったら、もしかしたら唯と同じ感情を持っていたかもしれない。いつか唯が抱いている誤解が自然と解ければ、それまではいくら俺のことを嫌ってくれても構わなかった。
だけど、高校生の時に、花菜のケガのことで騙されて……それが唯のウソだったってことはしばらくして判明したけど、そこからしばらくは、俺も唯のことが許せなくなって、口を利かなくなった」

「そうだったんだ……」

胸が、苦しい。ふたりの間に、そんな過去があったなんて。そしてそこに、まさか私がかかわっていたなんて……。


すると、ハルくんが一歩、唯くんに近づく。


そして。



「俺のことが嫌いだから、俺の恋人である花菜を奪おうとしたんだろ? 何度もあったもんな、こういうこと」

「……」

「だから花菜と同居していることを、お前には知られたくなかった。知られた以上は仕方ないとも思ったが、お前は昔からなにも変わってない。それなら、もう二度と花菜に会わせるわけにはいかない。花菜は俺の大事な女だ。お前に、唯に、これ以上かかわらせられない。花菜は俺が守る」

ハルくんがまっすぐに唯くんを見つめながらそう言うと、唯くんは下を向いて、なにも答えなかった。
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