御曹司と愛されふたり暮らし
「勉強も、習い事も、料理も、なにかひとつでも遥貴に勝ちたいって思ってた。なにかひとつでも勝てれば、父さんや母さんも俺のこと見てくれるって思ってた。でも、なにも敵わなかった……。

モデルだって……。

そうだよ、自分でやりたいと願って選んだ道だった。

だけど……

事務所も、スタッフも、みんな、どこかで遥貴のウワサを聞いて、遥貴はいつ連れてくるんだとか、遥貴はいつ撮影させてくれるんだとか、どいつもこいつも遥貴のことばっかりだ!


俺の努力を、夢を、なにもかも奪わないでくれよ!!」


大きな声で、唯くんの声が部屋中に、家中に響き渡る。


だけどそれは、今日初めて聞かせてくれた唯くんの心からの本心だってわかったから、少しうれしくもあった。


そして、ハルくんも私と同じように感じたのか……。



「ようやく、本心を話してくれたな」


そう言って、唯くんの前にしゃがみこんだ。


そして、唯くんの顔を覗きこみ……。



「怒鳴ってもいい。叫んでもいい。俺は、いつでもお前の本心を聞きたかった」

「遥貴……?」

「モデルのこととか、俺が唯をそこまで追いつめてること、正直知らなかった。ごめん」


すると、唯くんの目から、ポロ、と涙がこぼれた。


私もつられて涙をこぼしそうになったけど、グッとこらえた。


兄弟の距離が、今ようやく近づけたのを感じた。
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