御曹司と愛されふたり暮らし
「え?」

私もハルくんも、声を揃えてそう言った。それしか言えなかった。私は、目を見開いて唯くんを見つめた。多分、ハルくんもそうだと思う。


だけど唯くんは笑顔を崩さずに、話を続ける。

「今のままでも、事務所からモデルの仕事はもらえてるんだけどさ。でも、今のままじゃいつかは限界が来るような気がして。元々、海外でも活躍してるモデルに憧れて、自分もモデルになりたいって思ったからさ。モデルになるっていうのは自分で決めたことだし、留学してもっとレベルアップしたいって本気で思った」

一点の曇りもない眼差しで私とハルくんを交互に見る唯くんを、私はじっと見つめる。
急に留学なんて、ってビックリしたけど、純粋に、「がんばって」って思った。


「そうか……」

私の隣でそう呟いたハルくんに視線を向けると、ハルくんも小さく笑っていた。
きっと、不安や心配よりも、唯くんが自分の夢に向かって前向きに歩んでいこうとしていることが、お兄ちゃんとしてうれしいのだろう。

だけど、やっぱり。どこか寂しそうな顔もしていて――……。


ハルくんや唯くんに、どんな言葉をかければいいのだろうかと私が悩んでいると。


「用事を思い出したから、私はこれで失礼するわ。花菜さん、そこまで送ってくれる?」

と、四葉さんが言った。


「あ、はい」

なんとなく、四葉さんの意図がわかって、私も簡単な上着を羽織って、彼女と一緒に玄関を出た。
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