御曹司と愛されふたり暮らし
「あの、ありがとうございます、四葉さん」

下降する、ふたりきりのエレベーターの中で、私は四葉さんにお礼を言った。

「ハルくんと唯くんをふたりきりにするために、私を連れ出してくれたんですよね」

「あなた、遥貴さんの彼女なのに、彼に対する気遣いがまるで足りていないんじゃないかしら」

「うっ……」

言い方はちょっとキツいけど、ごもっともです。ふたりになんて声をかければいいのかを悩むんじゃなくて、こうしてふたりきりにさせてあげるのが正解だった。


エレベーターがロビーに到着すると、四葉さんはロビーの長ソファに腰をおろす。私も、その隣に座った。

四葉さんは、小さく息を吐いてから、ゆっくりと話を始めた。

「唯って、子どもの頃から本当に甘たれで、私はあんまり好きにはなれなかったわ」

「甘たれ?」

「うまくいかないことをすぐに遥貴さんのせいにしてたわ」

「それは、大人になってからではなくて?」

「昔からよ。たとえば、石につまずいて転んだのも、『そこに石があることを遥貴が教えてくれないから悪い』って言ったり」

ああ、なるほど。まあ、そのくらいのエピソードは、幼少期によくあることなのではと思ったけど……。


「……なんでも遥貴さんのせいにするのは、大人になってからも変わらなかった。ご両親は、遥貴さんにも唯にも変わらない愛情を注いでいたのに、自分だけ愛されてないなんて勝手な勘違いをして、勝手に遥貴さんを恨んで。バカみたいだわ」

「唯くんがハルくんを恨んでいたこと、四葉さんはやっぱり知っていたんですね」

「まあね。あのふたりとは、昔からよく一緒にいたし。でも、私が唯に注意しようとしても、遥貴さんがいつも『いいから』って止めてくるから。私はなにもできなかったけど」
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