御曹司と愛されふたり暮らし
しばらくして、ハルくんと唯くんがエレベーターから出てきた。
唯くんは私に明るく、「今日は留学の件を報告しに来ただけだから、出発する前にはまたあいさつに来るから!」と言ってくれた。
そして唯くんは、私とハルくんに大きく手を振りながらマンションを後にした。
すごく、晴れやかで良い笑顔だった。
「唯くんとなに話してたの? やっぱり留学のことだよね、って、はっ!」
なにげなく話しかけてしまったところで、私は今、ハルくんとケンカ中だったことを思い出した。なんで忘れてたんだ、私のバカ!
だけどハルくんは。
「留学先でどんな暮らしをするのかとか、どういうオーディションを受けるのかとか、そういう説明をしてくれた。多分、その方が俺が心配しないと思ったんだろうな」
と、普通に返してくれた。
「……私たち、今ケンカ中だよね?」
「……もういいじゃん。なんかバカらしくなってきた。一緒にコーヒーでも飲もうぜ」
そう言われ、私もなんだか拍子抜けというか、これ以上ムキになっても仕方がないと思い、「そうだね」と答えた。
お互い、謝るタイミングを失ってしまっていただけで、多分そんなに怒っていなかったのだろうな、と思った。
エレベーターが三十階まで上っていく途中で、「ハルくん、ごめんね」と素直に口にすれば、「こっちこそ、ごめん」と、彼も謝ってくれた。