御曹司と愛されふたり暮らし
部屋に戻ってくると、私はふたり分のコーヒーを淹れた。
それを、ふたりでソファに並んで座って、いつもみたいに口にした。


「うまい」

「だね」

仲直りもできて、一緒にコーヒーを飲む、落ち着いた時間。

リラックスできて、とても大好きな時間だ。


だけど、話さなきゃ。

この気持ちを話すことは、決して、この大好きな時間を壊すことじゃないから。


「ハルくん。私、やっぱりこのマンションを出ていく。もう、決めたの」

ハルくんも、少しの間の後、「……うん」と答えてくれた。


「もう、反対しないの?」

「したいよ。でも、花菜って普段の自己主張は少ないわりに、いざってなるとガンコだからな」

「ウソ。私、ハルくんの前でガンコになったことなんてあったっけ?」

「あったよ。小学生の時だけどな」

え。そんな昔の話?
私自身ですら、覚えてないんだけど。
でも、そんな昔のことを覚えてくれていたことがうれしいのも、事実だ。


「だけど、やっぱり俺は反対だ」

私がまっすぐに自分の気持ちを彼にぶつけたように、彼もまた、私に自分の気持ちをストレートにぶつけてくれる。
意見は食い違っても、彼の本音をぶつけてくれることはうれしいことだと、今はそう思えた。


だから、私も。



「ハルくん……」



自分の気持ちの、”すべて”を。

まだ伝えられていない気持ちがあることに、気づいたから。
それを伝えなくちゃ。


「ハルくん、私……」

「うん」

「私……





私と、結婚してください!!」

「げほっ!!」

ハルくんが、口に含んでいたコーヒーをげほっと吹きだし、ゴホゴホとむせてしまった。
< 176 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop