御曹司と愛されふたり暮らし
「え……」

「ビックリした。身体の具合が悪いとか、誰にも言えない悩みを抱えてるとか、そういうことかと思ったから。なんだ。ハハッ」

そう言われ、今度は笑われてしまった。


ポストカードをなくしたこと、彼にとってはほんの些細な……それどころかどうでもいいことなんだろう。
そりゃあ確かに高級なものではないし、人からもらった取り返しのつかない品でもない。ただのお土産だ。
だけど……だけど……。


「ていうか」

ご飯を食べながら、ハルくんはなんてことのないような様子で、



「そんなに気に入ってたのなら、俺が買ったやつやるって。同じの買ったもんな」

そう言ったのだった。



……確かに、同じものを買ったよ。

だけど、そうじゃない。

ポストカードをなくしてしまってこんなに悲しいのは、あれが私にとって特別なポストカードだったから。

大人になってから初めてふたりで外出して、なんかそれがちょっとだけデートみたいでドキドキしたりして。
ドキドキはしたけど、一緒に過ごす時間が楽しくもあって。
イワシの話をしたりして。
その思い出として買ったものだった。
それになにより……お揃いでうれしかった。

だから。


「……もん」

「え?」

箸を止めて私の顔を見つめるハルくんに、私は声を荒げた。


「私にとっては、笑いごとなんかじゃないもん‼︎」

バンッッとテーブルに箸を置き、私はまたしても子どもみたいに……その場を離れ、自室に入り、鍵を閉めた。
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