御曹司と愛されふたり暮らし
すると彼女は、ついにキッと私を睨みつけながら、厳しい口調でこう言う。

「おかしいですよね、結婚もしていない男女がひとつ屋根の下に暮らすなんて」

「え、えと……?」

「遥貴さんのお父様だって、遥貴さんに交際相手がいるなんて聞いていないと言っていました。
結婚を前提に交際が決まったのなら、あいさつに行くのが筋では?」

「ちょ、ちょっと待ってください」

いったいどういうことだ。け、結婚? 私とハルくんが?
この人、私がハルくんの彼女だと思ってる?


「違うんです。私は遥貴さんの元クラスメイトなだけです」

「元クラスメイト……?」

「そうです! だから彼女なんかじゃないです!」

よし、これで彼女の誤解は解け、ひとまず落ち着いて話ができるだろう……と思ったのだけれど。


「つっ、付き合ってもいないのに同居生活なんて! ふ、ふふふしだらにもほどがあります‼︎」

怒鳴られた。逆効果だったようだ。


「え、えっと……」

「もういいです!」

そう言って藤森さんは、ガタン!と大きな音を立てて席を立ち、私に背を向けて玄関の方へと歩いていく。


「ま、待ってください」

ハルくんのお客さんなのに、怒らせてしまった。このまま帰ってもらうわけには……と、私は慌てて彼女の後ろをついていく。


「ふ、ふしだらとか、そんなんじゃないです。部屋も違いますし、いかがわしいようなことはなにもなくてですね……!」

「付き合ってもいないのに一緒に暮らしていることがいかがわしいです!」

「すっ、すみません」

あぁ、謝ってしまった。こんなにかわいらしい彼女の、迫力に押されて。


でも、せめて。


「あの、遥貴さんに用事があっていらっしゃったんですよね? 私で良ければ伝言しておきます」
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