御曹司と愛されふたり暮らし
せっかくここまで来てくれたのだから、そのくらいのことはしたい。
それに、ハルくんが仕事で留守しているという話を聞いていたのに来たくらいだ。もしかしたら、すぐにでも彼に伝えたいなにかがあるのかもしれない。


……そう思ったんだけど。



「結構です。大体、あなたのようなふしだらな女に伝言なんて任せられません」

と、言われてしまった。


うぅ。完全にふしだらな女という設定になってしまっている。まあでも、普通に考えたら彼氏じゃない男性と同居生活なんてありえないことだろうけど……。


と、私が落ちこんでいると……。



「私は今日、どちらかというと遥貴さんよりあなたに用があってここへ来たんです」

と、彼女は私に背を向けて、そう言った。

首を傾げる私に、靴を履き終えた彼女は、背を向けたまま言葉を続ける。

「もちろん、遥貴さんがいれば遥貴さんと話したかったこともあるけれど……私、この前、遥貴さんから同居人がいるっていう話を聞いて、それが女性だと聞いて、その人は遥貴さんの恋人だと思って……遥貴さんの恋人がどんな方なのか見てみたかったんです。話をしてみたかったんです」

彼女の声は、さっきよりも随分弱々しい。
多分だけど、藤森さんはハルくんのことが好きで。
もしそうなら、ハルくんに恋人がいると思った時、ショックだったのだろう。


「でも!」

藤森さんはバッと振り返り、私を睨む。
すでに弱々しい雰囲気はなくて、私が気圧されそうになる。


「恋人なら、どんなに変でブスな女でもまだしも!
恋人じゃない⁉︎ 元クラスメイトなだけ⁉︎
あなた、決してブスじゃないけど、普通だし、地味だし、なによりいかがわしいし、ふしだらだし!」

「ま、待ってください。普通で地味なのは一切否定しませんが、同居の話を持ちかけてくれたのは遥貴さんの方で……」

「遥貴さんのせいにする気なの⁉︎ いかがわしくてふしだらなだけじゃなくて、性悪なのね!」

……もう、なにを言ってもムダな気がする……。
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