御曹司と愛されふたり暮らし
音楽のことはよくわからないけれど、流れるメロディに心を奪われそうになる。

ハルくん、自分で『大して上手じゃない』なんて謙遜していたけれど、とっても上手いじゃない。


それに、やっぱり。ピアノを弾く彼の姿は、本当になにかの絵画を見ているかのような素敵な存在となっていて。


――トクン。


あれ。



胸が……。



わ、私……?





「……あんまりずっと弾いてても飽きるよな。どうだった?」

数分後、彼は少し照れくさそうな表情で振り返り、そう尋ねてきた。


「じょっ、上手だったッ!」

「? なんか顔赤くないか?」

「そっ、そんなことないヨ!?」

ああ、声が裏返る。


でも、確かに顔が熱い。



この気持ち、私、やっぱりハルくんのこと――……。




「俺、今弾いた曲好きなんだ」

ポーン、と一音を響かせながら、彼がふとそう言った。


そうなんだ。確かに素敵な曲だった。


「誰の曲なの? あっ、音楽家の名前とかわからないかもしれないけど……」

「はは。スカルラッティだよ。知ってる?」

「聞いたことはあるかな」

「燃えるような恋に立ち向かうぞっていう曲だよ」

「え……」


燃えるような恋に、立ち向かう……。



「じゃ、リビング戻るか」

彼にそう言われ、私は「うん」と答えた。




燃えるような恋に立ち向かう。

その言葉が、しばらく頭から離れなくて。


私のこの気持ち、やっぱり恋、なのかな?

そうだとしたら、勇気を出してがんばらないといけないよね……。


そう思うと、なんだか勇気をもらったような気はしたけれど。




でも、燃えるような恋に立ち向かっているのは、藤森さんも一緒だ、なんていうふうにも思ってしまって……。


また、ちょっとだけ、胸がざわざわした。

大丈夫、ハルくんは藤森さんに恋愛感情はないって言ってたんだし――……。
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