御曹司と愛されふたり暮らし
「悪い、出ていい?」と聞かれたので、私はもちろん「うん」と答えた。

すると彼は上着のポケットから携帯を取り出すけれど。
……ディスプレイを見て、なぜか顔をしかめた。


「ハルくん? どうかした?」

「……四葉からだ」

「え?」

ドキ、と胸がざわついてしまったけれど。彼が「出なくてもいいかな」なんて言うので、
「ダメだよ! 急用だったらどうするの!?」
と言った。いい子ぶっているわけじゃなくて、実際にそう思っているけれど。


「じゃあ、ちょっと悪いな」

そう言うと彼は通話を始めた。

道の端に寄って足を止める彼に、私も合わせる。


……すると、最初は普段通りの様子で電話をしていた彼の様子が、途中で変わった。


「……おじさんが倒れた?」

突然、彼の口からそんな言葉が聞こえ、私にまで緊張が走る。


おじさんって誰だろう。もしかして、藤森さんのお父さんとか?


ハルくんはしばらく通話を続けていたけれど。


「わかったから、落ち着けって。俺もすぐに行くから」

そう言って、彼は電話を切った。


そして。

「悪い、花菜。四葉のお父さんが倒れたらしい。俺も子どもの頃から世話になってる人だし……それに、四葉がだいぶ動揺していて、側にいってあげたい。いいか?」

そう言われ、私も慌てて首を縦に振って、

「う、うん! もちろん!」

と答えた。


「俺から誘ったのに本当にごめんな。中華はまた今度」

「そ、そんなのいいから! 早く行ってあげて!」

私がそう言うと、彼はもう一度「本当にごめんな」と言って、駅の方まで走っていった。
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