11時30分に解ける魔法
「おねえちゃんとこのホテルに来たのよ。

 おねえちゃんが、良い事をしたら、良い事が起きて、急に結婚することになったとか言い出して。

 結婚前に二人で語り合いましょう、とか言って、来たくもないこのホテルに引っ張って来られたんだった。

 二人で夕暮れの庭を散策していたら、いつの間にか、偉く男前の従業員さんが後ろに立っていて、此処にお金を投げ入れて祈ったら、必ず願い事が叶うと言われたの」

「偉く男前、の一言はいらなくないか?」
と添真がケチをつけてくる。

「いい男を見ると、すぐフラフラしやがって」

 いい男にフラフラしてしまう性格だから、あんたにフラフラしてんじゃないのよ、と思ったが、それはそれで愛の告白のようなので、言わなかった。

「イケメン好きのおねえちゃんじゃあるまいし。
 フラフラなんてしてないわよ」

「莉音」
と少しイラついたように肘掛けを指で叩きながら、添真が言ってくる。

「喧嘩はやめないか。
 時間がない」

 いや、我々が喧嘩してるのはいつものことですけどね、と思っていた。
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