摩天楼レボリューション
促されて、私は慌てて身に着けていたグレーのピーコートを脱いだ。
そこで唐突に黒須さんが「ドレスコード云々」と言っていたのを思い出す。
要するに、ここに入るのに相応しい格好かどうか、あの時に審査されたという事なのだろう。

コートの下はベージュの生地に黒い水玉模様の襟付きのワンピース、そして黒のタイツに茶色のショートブーツを履いている。

自分の中では精一杯のおめかしではあるのだけど…。


「あの…。黒須さん」


細身のシルエットのダークグレーのスーツ姿になり、イケメン度が増した彼に一瞬ドキリとしつつも、それを慌てて押し隠し、おずおずと問い掛ける。


「この格好で、本当に大丈夫なんでしょうか…?」

「ん?」

「ロングドレスにハイヒール、とかじゃなくても良いんですか?」


セール時に5000円で手に入れたポリエステル素材のワンピースに3500円の合成皮革のブーツ、500円のタイツというコーディネートなのですが…。


「ああ、ちゃんとワンピースを着てるんだし、問題はないと思うよ。宮中晩餐会じゃないんだから、そこまでのフォーマルさは求められてないよ」

「そ、そうですか」


話がまとまった所で、お店の入口にあるフロントのようになっているブースまで近付いた。


「いらっしゃいませ」


こういう係を何と呼ぶのかは分からないけれど、とにかく上品な男性スタッフさんが恭しく私達を出迎えてくれる。
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