摩天楼レボリューション
だからこそ狙いを定めたのだ。
確実に私を拒否してくれるように。
とにかく声かけさえすれば、それで許してくれるって言ってたし…。

そこで私は思わず左前方に視線を向けた。
数メートル離れたファッションビルの入口付近に立ち、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら私の行動を監視している彼女達の姿を確認した所で、急いで男性に向き直る。

その動きにつられたのか、彼も同じ方向をチラリと振り返ってから私に視線を戻し、改めてまじまじと見つめ返して来た。

ああ…。

お願いだから早く、断りの返事をして下さい。
『なんだコイツ』って感じで、思いっきり迷惑そうな、侮蔑を含んだ眼差しで、無言のまま通り過ぎてくれても構わないから。
とにかく早く、私をこの苦行から解放して。


「…いいよ」


しかし私の期待は大きく裏切られた。


「ちょうど良かった。ここまで来たものの、やっぱ当日になって「一人はキャンセルで」って言うのは非常にマズイかなーと思ってたんだよね」

「えっ?」


今度は私が驚きの声を上げる番だった。


「君が付き合ってくれるのなら好都合。その服装ならドレスコードも問題ないだろうし。それじゃ、行こうか」

「あ、あのっ?」


想定していなかった事態に、慌てふためく私の背中に手を添えると、男性はそのまま歩き出した。
< 2 / 56 >

この作品をシェア

pagetop