摩天楼レボリューション
「……さて、それじゃあ、そろそろ行こうか」


しかし黒須さんは何事もなかったかのようにそう言葉を発しながらさっさと踵を返した。

私もそれに倣い、エレベーター前へと歩を進め、到着した箱に乗り込む。

そのまま一直線で一階へと降りた。

一瞬、『黒須さんはホテルエリアで降りてくれても良かったのに』と思ったのだけれど、すぐにエレベーターが直通であった事に気が付く。


「帰り方、分かる?」


エントランスを横切り、回転ドアの前で立ち止まると、黒須さんはそう問いかけて来た。


「最寄り駅まで送っていこうか?」

「あ、いえ。大丈夫です。ここら辺の地理はだいたい分かっているので。それに、まだまだ人通りはありますし」


だって今日はクリスマスイブ。
夜はこれからが本番だから。


「お食事、本当にご馳走さまでした。そして……ありがとうございました」


言いながら、私は深々と頭を下げた。


「いえいえ。こちらこそ、どうもありがとう」


姿勢を戻し、笑顔で佇む黒須さんを確認した所で、私は「それではこれで」と言葉を発した。


「うん。さよなら」


そう返す彼に今度は軽く頷き、そのまま背を向けて歩き出す。
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