甘々なボスに、とろけそうです。


「……っ!?」


「ゆっくりで、いいよ」


それだけ言うと、手を離された。ビックリした。手、繋いで歩こうとされたのかと思った……!!


「ヒール、苦手なんでしょ」


どうして、それ……。ほんの少しの間に、新條さんは、私のことをどれだけ把握してしまったの?


「このあと約束があるとかなんとか言ってたよね。それまで付き合うよ」


「で、でも……」


「いいから。そばに、いさせて」


 ◇


まさか、コーヒー1杯3000円もするとは思わず。

なぜメニューも見ずに『同じもので』なんて注文してしまったのだろう。おかわりなんて、してしまったのだろう。

顔面蒼白になる私をよそに、新條さんは、スムーズに会計を済ませてくれた。まるで、女性は払わなくて当然という感じで。

泣きそうだったのに、あまりにも世間とこのビルとのギャップが衝撃的で、なんだか悲しみが飛んでいった。

でもそれは一時的なもので、きっと私は、今夜にでもボスを想って泣くことになるだろう。1人になるまでは、こらえたいものだ。


「あの、今は持ち合わせがないのですが、返しに行きます。明日の朝にでも、新條さんの会社に」


「気にしなくていいよ」


「気にします……!」


「缶コーヒー奢ってもらったくらいの感覚でいいんだよ。僕にとって、そんなもんだし」


「いいえ、必ず――」


「ねぇ、みこ。その服や鞄、いくらするかわかる?」

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