男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
慌てて後を追う私が、ドア前で殿下に追いついたら、バルドン公爵が振り返って声を荒げた。
「まだ話は終わっていませんぞ!」
ドアノブに手を掛けた殿下は、横目でジロリと睨みつけ、低く鋭い声で言う。
「これ以上俺の時間を無駄にすると言うなら、舞踏会は欠席するぞ。俺が出なければ、叔父上の面目は丸潰れになる。いいのか?」
バルドン公爵は言い返さなかった。
悔しそうな歯ぎしりの音がするだけだ。
殿下はそのままドアを開けて廊下に出て行き、私も後に続く。
パタンとドアを閉めたら……「あの青二才め、今に見ておれ」という由々しき独り言が漏れるのを、聞いてしまった。
その後、殿下はクロードさんと仕事のために執務室に入って行き、私は授業があるので一旦自室に戻る。
教本を手に廊下に出ると、ちょうど向かいのドアが開いて、リリィが若い侍女を伴って出てくるところに鉢合わせた。
リリィは私を見るなり「ステファン!」と駆け寄って、無邪気に腕に絡みつく。